出会い系やったら奇跡の再開をした話
僕が出会い系を始めたのは今から丁度二年くらい前の話だ。
二年前、僕はヒッチハイクで日本中を放浪していた。その道中、神戸から京都に行く際に同い年の社会人男性に乗せてもらっていた。どうやら「Tinder」で出会った京都在住の彼女に会いに行くのだという。僕は彼に薦められるがままインストールし、無我夢中で右スワイプをし続けた。元々出会い系アプリなんてやるような人ではなかったからこれは僕にとって歴史的な出来事だった。
今でも皆さんからみれば十分すぎるほど好奇心旺盛かもしれないが、あの頃は頭のネジが何ヵ所か外れていたんだと思う。
新宿で宗教勧誘されればついていくし、友人に止められはしたがインスタでよくあるいきなりDMに「副業に興味ありませんか?」的なのを詳しく聞いてしまい潜入しようともしていた。
とにかく一生懸命何かを吸収しようとしていた時期であった。
結局、競争率バカ高の「Tinder」では一度も出会えずにすぐ某メンタリスト監修の「With」に乗り換えた。
今度こそ出会えると期待に胸を膨らませながらいいねを送り続けた。そして一人の女性と意気投合した。喜びもつかの間メッセージを見て衝撃を受ける。
「もしかして○○(本名)君?」
全身の血の気が引いた。
いや、、どうして分かるんだ???
プロフィールに特定できる情報を入れてしまったか…?
それとも同級生か何かの姉か??
恐る恐るどうして知っているのか訊いてみると、同じ高校の卒業生であり僕が高校生の時の教育実習生だったことが分かった。
これは何かの運命!!!
と感じ、すぐに遊びに行く約束を取り付けた。
話し合った結果一緒に地元の景勝地*1に行くことになった。僕は車どころか免許も持っていなかったため運転は彼女にさせた。
今考えてみればそれが最大の失敗だったかもしれない。
彼女はしきりにドライブデートはしたかったけど運転をしてほしかったと言っていた。
結局、二回目のデートをドタキャンされそれから連絡は取っていない。
大晦日にクリスチャンになった話
これは僕が日本中を旅しているときの話だ。
忘れもしない2018年12月31日の出来事である。
僕はカルトの洗礼を受け、形だけのクリスチャンになった。
なぜこんなことになったのか。
よく分かって頂くためにまずは前日から事の経緯を説明する必要がある。
前日、僕はリゾートバイト先の熊本の某温泉旅館を脱走した。
電波も3Gしか届かないような山奥での生活。
家族経営による閉鎖的コミュニティ。
先に入ったバイトの先輩の暴力。
それらに耐えられなかったからである。
バイトの先輩(女)「ビンタしていいすか??」
僕はやれるもんならやってみろと頷き、その直後右頬を強く叩かれた。この時左頬も差し出していたら*1上手く伏線回収ができたかもしれないが。そういうことはしなかった。
前から脱出したいと考えていたのでいい言い訳ができたとその瞬間決心し、昼休憩中に荷物をまとめて一目散に山を下った。
だけどここは山奥だ。歩けど歩けど山道でほとんど車とすれ違わない。熊や猿が出てきて襲われるんじゃないかとも思った。脱走した後ろめたさというよりも、このスリル感がたまらなかった。
歩きながら次は何をしようかと考えた。
遠くに逃げられることと、チャレンジ精神から日本で一番早い初日の出を見に行こうと決めた。
日本で一番早い初日の出を拝める場所は民間人が立ち入れる日本最東端の根室の納沙布岬かと思いきや、これが意外にも千葉県の銚子の犬吠埼なのである。*2
グーグルマップで現在地の熊本から銚子まで調べたところ約16時間とでた。
現在12月30日午後2時。初日の出まであと40時間ある。ヒッチハイクでの参考所要時間はグーグルマップの1.5倍~2倍だ。下道なら夜は移動しにくいとか色々あるが、高速道路なら大体この法則?が使える。なのでギリギリだけど勝算は十分にあった。
2~3時間は歩いたと思う。
ようやく民家が見えてきた。
足元にサッカーボールが転がってきた。小学校低学年くらいの少年が蹴ったボールだった。その子にボールを返しに行くと、そのお母さんらしき人が僕に興味を持ってくれた。
山から降りてきた大荷物の男、完全に不審者か遭難者の装いだが、事情を説明すると可哀想に思ってくれたのか隣町まで送ってくれることになった。
思いがけない形のヒッチハイク成功である。
その方は熱心なクリスチャン*3で、自分が信仰を持ってからいかに人生が変わったかを僕に熱心に話してくれた。
僕がミッションスクール*4出身だと話すとさらに盛り上がり、一時間、二時間と話しているうち隣町どころか隣県の大分県の日田インター*5まで送ってくれた。このエピソードもタイトルに関係ありそうだが、実は洗礼を受けたこととは全く関係がない。*6
それからというもの不眠不休でヒッチハイクをし続けた。
イベント会社のお偉いさん*7釣り帰りの団体、日暮里のかき氷屋さん、トラックの運ちゃん(大津から海老名まで…!)、バックパッカー経験のある娘さんとその家族。
何台も乗り継ぎ31日のお昼過ぎ、遂に新宿駅までたどり着いた。
けれども次の車を探しても中々見つからない。
そう。東京は日本でもっともヒッチハイカーに優しくない土地だからである。
1時間程粘っていると、二人組のおばちゃんに話しかけられた。
乗せてくれるのか…?と淡い期待を抱いていたが、どうやら車で来たわけではないようだ。
そう。この二人組が僕がクリスチャンになったきっかけの重要人物だ。
おばちゃん(以下オバ)「何をしてるの?」
僕「ヒッチハイクをしています!明日の初日の出を拝みたくて、、乗せてくださる方を探しているんです…!」
オバ「そう…。そしたらそれが上手くいくようにお祈りしてからいかない?」
この時宗教勧誘かな?とは思ったが好奇心が暴走していた僕は止まらなかった。
僕「お祈り…ですか…!興味あります…!」
オバ「そう!それなら一緒に行きましょう?」
僕「分かりました!行きます!」
もうこの出来事から2年以上経っているのでどんな会話をしたかなんて全然覚えてないが、割りとこんな感じで特に話をしないまま二つ返事で行くことを決めたと思う。
こんなことをしていたら日の出までに犬吠埼に着けるかどうか怪しくなってくるが、それでも僕の好奇心は止まらなかった。
行くことが決まりおばちゃん二人と中央線に乗って荻窪まで行った。
駅から徒歩5分以内。
教会はそこにあった。その名も
教会に着くなり聖職者らしき人が男女1人づつ出てきた。
女性はグレーのスーツを着ていて、いかにも宗教者といった風貌だった。
男性は黒のスーツを着ていた。小太りで眼鏡をかけていた。
聖職者男女「ようこそ!」
教会内部はやけに派手で立派なつくりだ。
早速、聖書拝読と讃美歌を歌った。
ミッションスクール出身の私でも全く聞いたことのない聖書箇所と讃美歌だった。
すかさず聖職者女が続ける。
聖職者女「あなたのこれからの旅が上手くいくようにさらに高い次元に導いて差し上げましょう。…儀式をやりますか?」
なんだかロールプレイングゲームに出てくるような胡散臭い台詞だが、ほんとにこんなことを言っていた気がする。
ただひとつ、どんな意図があるのかは分からないが確実に洗礼という文言は使っていなかった。
周囲を勧誘してきたおばちゃん二人組と聖職者男女に囲まれもう逃げられないと悟り、僕はその提案を引き受けることにした。
僕「はい。やってみます。」
オバ&聖職者男女「おおおおお!!生まれ変わりましょう!」
この反応には正直驚いた。
ここから儀式が始まる。
聖職者男女「それではお祈りをしましょう」
オバ&聖職者男女「アーメンアーメンアーメンアーメンアーメンアーメンアーメンアーメンアーメン…#%¥&#%¥&$*¥&#*&#%」
僕(な、なんなんだ…)
4人の大人が僕を囲み、お祈りでも何でもない呪文を唱えている。
そこそこ怖かったが少しクスッと笑ってしまいそうだった。
言ったからにはやらないといけないので、僕も一緒に唱えた。
僕「アーメンアーメンアーメンソーメン…ラーメンラーメンラーメンラーメンラーメンラーメン…¥**&#%&,*¥*&&####**¥」
2,3分ぐらいは唱えていたと思う。
聖職者女「はぁっっっっっ!!!!!!」
ようやく儀式が終わったかと思っていると、まだ何かあるみたいだ。
聖職者男「そしたらこれから更衣室に行って白い服に着替えてもらいますね。」
僕「え?これから何かするんですか!?」
聖職者女「冬でちょっと寒いけど外のプールに入ってもらいますね^_^」
冬に屋外プール!?正気の沙汰ではないが、もうあとには戻れない。
続いて更衣室に案内される。
聖職者男「こちらにお入りくださり、下着もすべて脱いでこれを着てください。」
白装束のような格好に着替えた。というより、半ば強制的に着替えさせられた。
そのあと案内されたのはやはり正真正銘の屋外プールだった。
これからする得体の知れない儀式もそうだが真冬に冷水プールに入る方が圧倒的に不安だった。
聖職者女も白装束のような格好に着替えてこちらにやって来た。
聖職者女は慣れた様子で冷水プールに入っていった。
僕も続いて冷水プールに入る。
全身に刺すような刺激が走る。
僕(もうちょっと我慢すれば、儀式はおわる…!はやく抜けて銚子を目指そう。)
聖職者女「3.2.1と数えるので数え終わったら勢いよく頭も入ってください!」
と。僕の頭を押さえながら言ってきた。
その瞬間、少し死を覚悟した。
仮に僕がプールに全身入った瞬間その場にいる全員に押さえつけられたとしたら…
そんなことを考えてしまったからである。
聖職者女「3.2.1!!!」
僕は頭から冷水プールに浸かり洗礼を受け、クリスチャンになった。
一同「おめでとうございます👏👏👏」
成人後に大の大人達から露骨に拍手喝采を受けるという中々ない経験をした。
その後、美味しいカステラと紅茶を頂き、いつでも来てくださいねと名刺を頂いた。
結局3時間程のロスになり、高井戸の時点で完全に日が暮れてしまったが運良く?大人の事情カップル*9に拾ってもらい海ほたるまで行くことができ、そこで苦戦したのち優しいお兄さんに銚子まで連れて行ってもらいめでたくゴールできた。
それ以来一度も行っていない。
いつか行こうとも思わない。
*1:新約聖書『マタイによる福音書』5章39節から。「自分に敵対するものを受け入れよ。」という意味だと一般的に言われているが、最近では新しい解釈が出てきてる。詳しく知りたい方は調べて頂きたい。
*2:午前6時46分日の出。離島を除く。国土全体では南鳥島が一番早い。
*3:ぶどうの木教会。日本福音キリスト教会連合所属。決まった教会を持たずに毎回礼拝する場所が違うらしい。
*6:ごめんなさい。
*7:後にバイトを斡旋してくださった。因みにオリンピックの聖火リレーのスタッフの仕事も頂いたが、大規模イベント経験者が多く希望してきたという事で取り下げられた。ご存じの通りオリンピックは開催できておらず開催したとしても規模縮小開催なので、ある意味ホッとしている。
*8:戦中日本発祥で自らをカトリックでもプロテスタントでも無いとし、1世紀の初代教会と同じ信仰であると主張しているらしい。
*9:友達らしいが、あの感じからして多分、不倫カップルな気がした。有識者(仮)に言わせれば僕を乗せたのもアリバイ作りらしい。その根拠は良く分からないが。